Posted by 著者ブログ | Posted in OQ企業事例 | 投稿日: 2010年05月01日
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翻訳本の場合、海外事例ばかりで日本の事例じゃないのがイマイチという指摘はよくあります。先日、2010年4月26日のテレビ朝日系『スーパーモーニング』で紹介された東京都町田市にあるパナソニック系列の地域密着型家電店「でんかのヤマグチ」は、『OQオーナーシップ指数』でとりあげられたケースとよく似た経営で頑張っています。
まず、番組中に紹介されたお客さんの事例がビックリ。
- 客の留守を預かって3日も泊まる。
- 年始に来て食事をしていった。
- お風呂にはいっていった。
- ご主人の遺言が「何かあればヤマグチさんを頼りなさい」だった。(従業員が葬儀に参列する事例は「モーズ・ステーキハウス」にあります。)
日本経済新聞や日経MJでもすでにとりあげられていますが、町田地区に進出してきた家電量販店との価格競争を回避するために、まずは顧客を選抜することから着手したそうです。「顧客オーナー」を選抜して利益を確保していくところなどは、「ラックスペース・ホスティング」の手法に通ずるものがあります。
高くても買ってくれる「顧客オーナー」をターゲットとして「儲かるビジネス」を目指しました。たとえば、「困りごと解決サービス」では電球1個でもOK。『OQオーナーシップ指数』では類似のサービスで大失敗した「コズモ・ドット・コム」のケースが紹介されていますが、でんかのヤマグチでは、電球1個の交換にも出向くかわりに、500円程度の手数料を取るそうです(金額が1万円以上の場合は無料)。
20人程度の営業担当者で巡回し、月1回は呼ばれなくても訪問するそうです。山口勉社長は、「かゆいところに手が届くのは当たり前。かゆくなる前に駆けつけろ」といいます。「先読み管理」の実践です。「スパモニ」の報道によれば、お客さんはこの巡回訪問で何かしらを注文してくれるそうです。
ちょっとビックリなこのサービスの追い風となったのが高齢化と家電製品のデジタル化。家電量販店より5万円高い価格設定でも、手厚いサービスを好む高齢者が増加したというわけです。
さて気になる業績ですが、目標を掲げて7年目の2004年3月期に粗利率34.7%を達成。2006年3月期は売上高12億5,000万円と量販店ができる前の8割の水準にとどまるものの、粗利率は36.5%まで伸びたとのことです。(『日本経済新聞』2006/09/16、15面より)
「街の電器屋さん生き残りの秘訣——「でんかのヤマグチ」山口勉社長に聞く。」(『日経MJ』2006/01/27、7面より)
——価格では量販店にかないませんね。
「お客さんのところへ行くと『最近は安い店があちこちに出てるわね』と言われるでしょ。営業マンは『少しでも量販店価格に近づけないと…』と考えがちだけど、それが間違い。無理してカッコつけずに『ちょっと高いかもしれませんが、一生懸命サポートさせて頂きます』でいいんです」
「ウチは経営安定のために粗利益率35%を確保するから、量販店で22万円の薄型テレビが28万円だったりする。これを25万円にしたって単なる自己満足。お客さんにすれば『あちこちに安い店が』はあいさつ代わり。実は『お前の言い値で買うんだからわがままを聞いて』という人が大半です」
——裕福なお客さんが多いのですか。
「とりわけ裕福ということはありません。顧客の平均年齢は61歳くらいですが、60、70になると5万円くらいの差にこだわりませんよ。その代わり困り事は何でも親切にしてあげる。宅配便やはがきを代わりに出したり、営業車で駅まで送ったり。夏に冷蔵庫が故障したお客には氷を持って駆けつけますよ」
「ウチの営業スタイルは医者や弁護士などのお金持ちには向いてないらしくて、100万円くらいする65型テレビを買ってくれるのも普通の人です。それも『定年になればテレビが友達。いい友達を持たなきゃ』『いいテレビを見とかなきゃあの世にみやげ話がないよ』なんて言える関係があってこそ。松下というより『ヤマグチ』のブランドを買ってもらいます」
——量販店に対抗するために顧客数を絞り込んだそうですね。
「10年前に34,000人から14,000人に減らしました。何年かお買い上げのなかったお客さんを訪問営業やダイレクトメール送付のリストから外したのです。粗利益率を上げるためには売値も徐々に上げざるを得ないわけです。言いにくいですが『ヤマグチがお客さんを選ぼう』という発想。口コミで新規顧客も入ってきますよ。売上構成比は外回りが65%、店頭が35%くらいです」
Posted by 著者ブログ | Posted in お知らせ | 投稿日: 2010年04月30日
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天候不順の日が続く4月3週目でしたが、
マーケティングを専門とする訳者としては、まず現場からということで(ホントか(笑))
大手書店をまわって、『OQ オーナーシップ指数』の売り場観察をしております。
書店を訪問して、まずは手に取ってみるのですが(サクラかって(笑))、
渋谷の紀伊國屋書店と八重洲ブックセンターでは
お客さんが実際に手にとってくださって、隣でドキドキしてたと(笑)。
残念ながら購入していただけませんでしたが。
丸善の丸の内本店ではポスター+平積み4カ所ですが、
東京駅の反対側にある八重洲ブックセンターでは、
写真にあるようなPOPをおいてくださっています。
エスカレーターでビジネス書がおいてある2階に上がると
目の前の新刊本コーナーにありますので結構目立ちます。
(その後、フェイスが1列になりましたが(笑)。)
また、マーケティングの棚の前にもありますよ。
池袋のジュンク堂では、バックリンの『流通経路構造論』があったので
つい購入してしまいました。(関係ないけど(笑)。)
暇さえあれば都内大手書店さんの『OQ』の周りをうろうろする予定ですので
『OQ』の棚でお目にかかれるのを楽しみにしています(笑)。
川又啓子
1.まずは新宿の書店から(マーケティングの棚)
紀伊國屋書店新宿東口店1
紀伊國屋書店新宿東口店2
ジュンク堂新宿東口店
Book 1st新宿店
2.目先を変えて浜松町(ビジネスの新刊本の棚)
dan(文教堂)
3.そして渋谷は(マーケティングの棚)
紀伊國屋書店渋谷店
4.いよいよ八重洲ブックセンター(2階エスカレーター降り口目の前)
八重洲ブックセンター1
八重洲ブックセンター2
5.月末は池袋で(ジュンク堂はマーケティングの棚、リブロはサービスの棚)
ジュンク堂池袋店
リブロ池袋店
Posted by 著者ブログ | Posted in お知らせ | 投稿日: 2010年04月17日
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ついに店頭デビューした『OQ オーナーシップ指数』。対象読者に大きな影響を及ぼすとされる「丸善丸の内本店」さんにお邪魔しました。事前に書店の担当者にアポを取っていったのですが、ある理由(一番最後の写真参照)のため、われわれだけで店内視察しました。
まず入り口近くにでかでかとポスターが貼られています。
店頭プロモーション1
うれしいことに、店内4カ所で平積みされています。
では、ここからは「ウォーリーを探せ」でまいりましょう(年がばれるけど(笑))。さ〜て、どこにあるでしょーか(笑)。
店頭プロモーション2
店頭プロモーション3
店頭プロモーション4
店頭プロモーション5
昨日は『1Q84』の発売日でした。実は題名案に『20OQ』というのがあったのですが、まさか同日になるとは。「誤」購入した読者から文句が殺到していたかもしれません(笑)。
『1Q84』発売日
川又啓子
Posted by 著者ブログ | Posted in お知らせ | 投稿日: 2010年04月15日
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ついに、『OQ(オーナーシップ指数)サービスプロフィットチェーンによる競争優位の構築』が配本されました。大きな本屋さんには、明日あたりから並ぶはずです。アマゾンにも登場しています。
装丁は、黒字に黄色の阪神タイガースカラーになりました。実は、原著が黒と黄色の組み合わせだったので、日本語版もイメージを統一しました。ただ、店頭で目立つようにと何度もデザインを作りなおし、デザイナーさんにかなり無理を言ってお願いしました。出版社の担当者によると、「装丁デザインを2度以上修正させる人はそういない」そうです。
帯のメッセージにも凝りました。知能指数(IQ)、心の知能指数(EQ)との対比で、OQを打ち出しています。IQ、EQに関心のある人にも目にとめてもらおうという意図です。また、このブログの存在も示しました。さあ、はたして我々の意図通りになるでしょうか。
是非店頭でご覧下さい。コメントもお待ちしております。
黒岩健一郎
Posted by 著者ブログ | Posted in 訳者苦労話 | 投稿日: 2010年04月09日
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いよいよ本日『OQ オーナーシップ指数』が刊行されます。去年の7月から始まった翻訳プロジェクトですが、半年間の苦労話をちょっとだけご紹介します。
まず、なんといっても”Ownership”をどう訳出するかが議論になりました。書名になるような本書の鍵概念ですから、どう訳出するかは最も重要な作業です。「訳者まえがき」には、要約だけが書かれていますが、次のような議論がありました。
- アメリカの会社は、会社は株主のものと考えているので、アニュアルレポートには”your company”と書くため、「我が社」とはいわないらしい。だから”ownership”という言葉にインパクトがあるのかもね。
- だったら、日本の従業員は、もともと「我が社意識」が強いから「所有者意識」といっても、インパクトないんじゃないの。
- 確かに、日本の実務家からすると、従業員の「オーナー感」についてはあまり目新しい概念ではないかもわかりません。
- 「マイカンパニー」とか「マイブランド」みたいな感じで、「マイカンパニー指数」はどうだろう。
などなど。原題は”The Ownership Quotient”ですから、「指数(Quotient)」をひっつけると・・・
- 「我が社意識指数」
- 「愛社精神指数」
- 「おらが会社指数」
- 「当事者意識指数」
前作では直球で「所有者意識」が使われていたのですが、「満足」や「ロイヤルティ」の上をいく概念として「オーナーシップ」を普及させたいという気持ちもありましたので、本書では「オーナーシップ」をカタカナにして用いることにしました。
さて、みなさんはどのようにお感じでしょうか。
04月09日(OQの日) 川又啓子
Posted by 著者ブログ | Posted in お知らせ | 投稿日: 2010年03月31日
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「OQ サービスプロフィットチェーンによる競争優位の構築」は、”Ownership Quotient : Putting the Service Profit Chain to Work for Unbeatable Competitive Advantege” の翻訳です。
この本は、ハーバード・ビジネススクールの名誉教授J. L. Heskett先生とW. E. Sasser教授、そしてコンサルタントのJ. Wheelerの3名による著作です。Heskett先生もSasser先生もサービス・マネジメント研究者として有名です。Wheelerさんは、Service Profit Chain Instituteというコンサルティング会社の社長です。おそらく、この本に掲載されているコンセプトを使って企業へのコンサルティング活動を行っているようです。
原著の評判は、アマゾンの書評を見る限り、なかなかいいです。
実は、この本には前作、前々作があります。両署ともに日本語訳が出ています。
The Service Profit Chain (日本語版「カスタマー・ロイヤルティ経営」1998年)
The Value Profit Chain(日本語版「バリュー・プロフィット・チェーン」2004年)
これらを読まれた方は、是非、最新刊もご覧ください。サービス・プロフィット・チェーンの進化型が示されています。また、前作前々作をご覧いただいていない方も、十分楽しめます。例えば、サービス・プロフィット・チェーンについては、コラムで詳しく紹介されています。
4月20日頃に店頭に並びますので、ご期待ください。
黒岩健一郎
Posted by 著者ブログ | Posted in ビルド・ア・ベア ワークショップ | 投稿日: 2010年03月22日
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本書の中では、OQの高い企業の例として、「ビルド・ア・ベア ワークショップ」が取り上げられています。この企業の行っている事業は、ぬいぐるみやそのぬいぐるみ用の服などの小売店舗での販売です。しかし、単にぬいぐるみを販売しているというよりも、ぬいぐるみを自分の好みにカスタマイズしていく楽しみを提供していると言ったほうがいいでしょう。彼らは「体験型ストア」と称しています。
すでに日本にも進出しているので、翻訳の正確性を高めるためにも、店舗に出向いてみることにしました。しかし、さすがに子供がメインターゲットであるビルド・ア・ベア ワークショップに、おじさん1人で行く勇気はありません。妻に頼んで、池袋のサンシャインシティ内にある店舗に一緒に行ってみました。
店舗に近づくと、まず、にこやかなお姉さんが挨拶してきました。そして、ぬいぐるみの外側の部分だけが積まれている棚に案内されます。社名に「ベア」がつくので、ぬいぐるみはクマだけかと思っていたら、フクロウやさる、犬のぬいぐるみもあります。15種類以上のぬいぐるみの皮がならんでいるので、どれを選ぶかで結構時間がかかりました。さらに、同じ種類でも、縫い方の違いで微妙に顔の表情が違います。たぶん、わざと均一にならないようにしているのだろうと思います。一番かわいい(と思う)ものを選びました。
次に、サウンドチップを選びます。「I Love You」という声がするチップを選んで、ぬいぐるみに綿を入れる所に移動します。綿を入れ、サウンドチップを埋め込んだ後に、儀式があります。ハート型の心臓にキスして、ぬいぐるみにもキスをさせて、願い事をするのです。さすがに妻も照れくさそうでしたが、子供たちは、これで、ぬいぐるみとお友達になった気持ちになるのでしょうね。
綿が入ってふっくらしたぬいぐるみができたら、次は出生証明書をパソコンでつくりました。名前は、なぜか「リック」としました。なんとなく、和風の名前は似合わない感じがしたのです。
問題は、この後です。店内には、この裸のリック君用の洋服がたくさん飾ってあって、それを無視してレジに向かうことはほぼ無理でしょう。妻は、リック君にいろいろな服を着せ始めました。Tシャツ、ジーンズ、オーバーオール、下着まであります。帽子、サングラス、靴下に靴、バッグなど、小物も充実しています。結局、ぬいぐるみに加え、サングラスと革ジャンを購入しました。ぬいぐるみだけだと1700円だったのに、合計5750円にもなってしまいました。
リック君は、自宅のソファーに陣取っています。妻は、次のアイテム(和服?)を狙っているようです。
黒岩健一郎
Posted by 著者ブログ | Posted in シンプル・エクセレンス | 投稿日: 2010年03月17日
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第6章に、「シンプル・エクセレンス」というワードが出てきます。本文では、顧客と直接接触する従業員が、顧客へ感動経験を提供できるように構築されたオペレーションの基本的な骨格と説明されています。つまり、現場社員にも簡単にできるようにシンプルなオペレーションであるが、うまく仕組まれているので顧客が感動してしまう、そんな取り組みのことです。
シンプル・エクセレンスの事例として、インドのダバワラが取り上げられています。ダバワラは、お弁当のデリバリーサービスですが、読み書きのできない従業員でも、お弁当を間違いなく配送できるようなシステムが紹介されています。(詳しくは、本をごらんください)
先日、クラブメッドのバリ島へ行ったのですが、そこでシンプル・エクセレンスの事例を発見しました。
クラブメッドの従業員が、あちこちで、あるカップルに、「ハッピー、ハネムーン」と声をかけていました。事前に、ハネムーン客が来ているとわかっていても、どのお客さんかを特定するのは難しいはずです。たくさんのお客さんがいる中で、なぜ多くの従業員が、そのカップルがハネムーンであることがわかるのか、最初は私にはよくわかりませんでした。でも、よく観察すると、従業員はカップルの手首をチラッと見てから、「ハネムーンなんですね。楽しんでください」などと声をかけています。
実は、クラブメッドのバリに宿泊するお客さんは、全員、手首に色のついたひもを結ばれています。チェックインのときに「クラブメッドに宿泊している方と外部の方を見分けるために、ひもをお付けいただいております。バーなどでは、このひもを見せていただければ、飲み物は無料でお飲みいただけます」と説明されます。従業員は、そのひもの色でハネムーン客を判断しているのです。ピンク色のひもをした人が、ハネムーンです。私たちは、グリーンのひもでしたので、一般の(VIPではない)大人客でしょう。アルコールを提供できない子供客も別の色にしていました。もちろん、VIPも区別されています。
このように、単純な工夫ではあるけれども、これによって現場の社員が適切な対応をすることができます。たくさんの従業員に声をかけられていたカップルは、照れながらも、嬉しそうでした。おそらく、次の旅行もクラブメッドでしょう。大したコストはかからないのに、大きな武器になっていました。
黒岩健一郎
Posted by 著者ブログ | Posted in お知らせ | 投稿日: 2010年03月09日
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このブログは、04月09日に発行予定の「OQ(オーナーシップ指数) サービス・プロフィット・チェーンによる競争優位の構築(仮題)」に関するブログです。
OQとは、Ownership Quotient の略です。OQは、本書の重要なキーワードです。OQについて、少しだけご説明しておきましょう。
本書では、顧客や従業員がまるで自分たちが会社を所有しているがごとくふるまう企業の事例が数多く紹介されています。このようなオーナーシップ意識を持った顧客、そしてオーナシップ意識を持った従業員が多い企業こそ優れた企業であると説いています。オーナーシップ意識を持った顧客の全顧客に占める割合を顧客OQ、オーナーシップ意識を持った従業員の全従業員に占める割合を従業員OQと定義しています。顧客OQと従業員OQが高い企業は、収益性も良いことも記されています。
このブログでは、このOQに関係する話題を提供したいと思います。みなさまの本書の理解を促進できれば幸甚です。
03月09日(OQの日) 黒岩健一郎