502教室のコラムの過去記事一覧


第18回「502教室のコラム」NEW!

金 世永(中小企業診断士)

診断士 このコラムをお読みいただいている受験生の皆さん、学習ははかどっていますか? 当初計画した学習スケジュールの進捗状況は、いかがでしょうか? 順調に学習計画をこなしている方、少し遅れ気味で何とか当初のペースに戻そうと奮闘されている方、ずいぶん遅れ気味で半ばあきらめモードになりつつある方、そもそも計画らしい計画は立てていらっしゃらない方等々、いろいろな方がいらっしゃると思います。

私が受験生活を送っていた頃は、Excelで学習計画表を作成し、縮小印刷して手帳に貼り付け、いつでも確認できるように肌身離さず持ち歩いていました。今週は企業経営理論、来週は財務・会計、その翌週は生産管理といった具合に、比較的ざっくりした計画ではありましたが、その計画表をペースメーカーに、テキストの熟読や問題集チャレンジ等に取り組んでいました。仕事をしながらの学習でしたので、まったく勉強できない日も多々ありましたが、その都度手帳を開いては進捗状況を確認し、必要に応じてスケジュールの修正も行いながら勉強を進めていたことを、いまでも鮮明に覚えています。

診断士試験は学習範囲がとても広いため、ひと通りテキストを読み込むだけも相当な時間を要します。ようやく読み終えたと思っても、最初の頃に読んだ内容はすっかり忘れていたり、一度チャレンジした問題であっても、再度トライすると同じ問題でつまずいたり、そんなことは日常茶飯事でした。それでも、めげずにくり返しテキストを読み、問題集を解いて、知識を深める。その連続でした。

診断士資格は、いまやビジネスパーソンにすっかり人気の資格となりました。社団法人中小企業診断協会発表の「第1次試験の統計資料」※によれば、平成22年度1次試験の申込者数は21,309人で、受験者数は15,922人とのこと。申し込みこそしなかったものの、診断士を目指して学習中の方も多数いらっしゃるでしょうし、毎年数万人のビジネスパーソンが、この資格を取得するために努力していることがわかります。

合格率を見ると、診断士試験の難しさを改めて実感しますが、難しさの1つの要素として、1次試験の合格に有効期限が設けられていることが挙げられます。有効期限を設定することの意義や重要性は十分に理解しているものの、私も受験当時は、この制度のおかげでずいぶんと苦労しました。決して簡単な試験ではない、だからこそ価値があるのだと自分に言い聞かせては、何度もチャレンジをくり返したものです。

中小企業を取り巻く環境は刻々と変化しており、経営者も日々変化する経済経営環境と向かい合っています。「変化への適応こそが、企業の生きる術」と言いますが、中小企業を支援する立場である診断士も同じく、もしくはそれ以上に変化対応力が求められます。そうした認識のもと、私は今日も明日も新しい情報や知識に触れ、それらを知恵に変換できるよう、取組みを続けています。とは言え、漠然とそれらを行っていては、なかなか自らの糧になりません。そのため、受験生時代とは少しスタイルが異なりますが、いまでも新たな知識の習得のために、計画的に学ぶ努力を心がけています。とにかくまずは、計画を立てること。そして、行動・チャレンジをすること。こうした取組みがあってこそ、その延長線上に合格という成果があるのです。

先ほど1次試験の申込者数と受験者数をご紹介しましたが、数字に開きがあったことに、皆さんはお気づきになりましたか? 決して安くない受験料を支払って申し込んだものの、結局は受験しなかった方々が、4人に1人もいらっしゃるのですね。この数字には、私も驚きました。

申し込みんだのに受験しなかった、もしくはできなかった理由はさまざまだと思いますが、当初計画した受験勉強がなかなかはかどらず、受験を断念された方も多いのではないかと思われます。申し込みをした瞬間から試験当日まで、改めてタイムマネジメントを心がけ、学習に取り組んでいれば、受験を断念する方がこれほど多くはならなかったのではないでしょうか。

タイムマネジメントの重要性を認識すること。これは、試験合格のみならず、ビジネスパーソンとして、非常に大切なことですね。私自身、このコラムを書きながら、その重要さと難しさを痛切に感じている今日この頃でした。


第17回「502教室のコラム」NEW!

三上 康一(中小企業診断士)

診断士診断士2次試験に合格して間もない頃、あるラジオ番組を聴く機会がありました。それは、30年間にわたって毎日ジョギングをしている高齢男性へのインタビューでした。その方は運動のおかげなのか、高齢にもかかわらず、若々しく朗々とした声だったことを覚えています。

 私は受験生時代、主に朝の時間を使って勉強していました。その後、試験に合格し、受験勉強をしなくなってもやはり、早朝に目が覚めてしまうわけで、朝の時間を持て余していた私は、このインタビューを聴いてジョギングをすることにしました。とは言え、ジョギングなんて高校時代の部活以来、20数年ぶりの話です。

 初日は30分間走る予定でしたが、ほとんどウォーキングになってしまいました。おまけに、翌日はひどい筋肉痛です。しかし、それに耐えて毎日走り続けているうちに、いつの間にか筋肉痛がなくなっていきました。そしてしだいに、ウォーキングよりもジョギングの時間のほうが長くなり、当たり前のように30分間完走できるようになっていったのです。

 走ると体の細胞が活性化するのでしょうか、爽快感も得られるようになってきました。また、血行がよくなったのか、筋肉がついたのか、長年苦しんできた腰痛・肩こりも解消していきました。さらに数ヵ月後、ズボンのウエストが緩くなってきていることにも気づきます。初めて知ったダイエットの味。ジョギングの効果が、目に見えて現れるようになってきました。

 あれから3年半が経ちますが、いまだにジョギングは続いています。効果を感じることができ、そのような経験があるからこそ、これまでジョギングを続けられたのだと思います。

 診断士の受験勉強においても、効果を感じながら勉強できれば楽しくなりますし、継続することも苦ではなくなるでしょう。しかし実際には、自分にどれだけ実力がついたのか、勉強の効果を感じられず、無力感に襲われることもあると思います。ここで気をつけたいのは、勉強の効果は降ってくるものではなく、自分で見つけ出していくものだということです。

 1次試験の勉強を開始した当初は、テキストの内容が理解できず、講師の言っていることがちんぷんかんぷんな状態でも、それなりに時間を費やせば理解できるようになってきます。それでも模試の順位が低かった場合は、勉強を始めた当初の自分を思い出してください。その頃の自分に、いまのような模試の点数がとれたでしょうか。

 また、2次試験対策を開始した当初は、80分で事例を解くことができず、マス目も埋まらなかったけれど、演習をくり返せば、とりあえずはマス目を埋められるようになってきます。それでも受験校の事例演習で10点や20点しかとれなかった場合はやはり、試験対策を始めた当初の自分を思い出してください。その頃はきっと、いまのような解答を書けなかったはずです。

 勉強を始めた当初を思い出すということは、自身の成長という勉強の効果を感じるだけでなく、診断士を目指した初心を思い出すきっかけにもなり、それがさらに自身のモチベーション向上に寄与してくれることでしょう。

 ほんのわずかでも自分の成長できた部分に光を当て、一歩一歩、進み具合を確認しながら、受験勉強をしていきたいものです。合格というゴールにたどり着くには、一歩一歩を積み重ねるしかないのですから。


第16回「502教室のコラム」

及川 勝永(中小企業診断士)

診断士資格の取得を目指そうとしている人から、「診断士資格って、役に立つんですか?」という質問を受けることがあります。私も診断士を目指そうと思った当時は、診断士がどんな資格なのか、資格を取るとどんなメリットがあるのかがとても気になりました。
でも、次の質問には答えられません。

「診断士資格を取ったら、独立できますか?」

 質問する本人にしてみれば、せっかく時間をかけて勉強するのであれば、価値が高く、将来的に役に立つ資格を狙いたいと思っての質問でしょう。そして、合格率は高く、勉強時間やお金などの投入コストは低いほうがいいに決まっています。

ここで、ブルームの「期待理論」の式をまねて、「資格の期待値」の式をつくってみました。

資格の期待値=「資格の絶対価値」×「合格率」÷「投入コスト」

 ※本当の期待理論の式は、「努力が報われる確率」×「報酬に対する主観的価値」=「仕事に対するモチベーションの高さ」です。
どうですか? 皆さんの頭の中でも、こんな感じでそれぞれの資格の期待値を計算されているのではないでしょうか。

 私がつくったいい加減(?)な式ですが、さっそく検証していきましょう。まず、この式の中にある「合格率」と「投入コスト」という項目ですが、これは統計的なデータがあれば算出できる値です。問題は、「資格の絶対価値」でしょう。でも、ちょっと待ってください。そもそも「資格の絶対価値」って、本当にあるんでしょうか。ここで改めて、資格の価値について考えてみます。

 皆さんが目指している「資格」には、いったいどんなベネフィットがあるのでしょうか。私が考える資格のイメージとして一番近いのは、「道具」です。たとえば、農作業で使う「鍬」のようなものです。もし畑を耕すのであれば、鍬を持っていれば、ない場合に比べて効率的に作業を進められるでしょう。もしかすると、鍬を持っていない人から「俺の仕事を手伝ってくれ」と頼まれるかもしれません。

 ただし、自動車をつくる仕事をしたいのであれば、鍬を持っていてもほぼ間違いなく役に立ちません。むしろ仕事が多種多様な現代では、鍬を持っていても役に立たない仕事のほうが多いのが普通です。

 このように、どんな仕事にでも役に立つ道具がないのと同様、どんな仕事にでも役に立つ資格もないんですよね。つまり、「絶対的な価値」を持った資格なんかないということです。

 また、弁護士のように難易度が高く、希少性のある資格を取ったとしても、そもそも法曹の仕事が好きでなければその資格が使われることはありません。自分のやりたいことや将来の目的ではない資格を取っても、これまた役に立たないのです。

 とは言っても、診断士資格は他の資格に比べて、汎用性は高いでしょう。ビジネスのさまざまなシーンでその知識を活かすことができます。しかし、残念なことに決して万能ではないし、持っているだけで価値のある「金のガチョウ」でもありません。

 診断士には、「クライアントのために能力を活用できる」、つまりクライアントのことを「考え」、「伝え」、「成果を上げる」といったことが楽しいと感じる、ちょっとお節介な適性が必要になります。

 というわけで、先ほどの式を修正してみました。

資格の期待値=「目的と資格の適合度」×「資格に対する個人の適性」×「合格率」÷「投入コスト」

 この式で資格の価値を算出するためにも、まずは本人の資格取得の目的と自身の適性を分析することが必要になるのではないでしょうか。もちろん、資格を取ってから目的を考えてもいいのですが、私のようになかなか方向性が定まらずに苦労するので、あまりおすすめはできません。

 もちろん、企業価値算出の公式が複数あるように、資格の期待値の公式が複数あってもいいですよね。というわけで、診断士の期待値の別解がこれです。

資格の期待値=「あなたに対する顧客の評価」

 診断士の価値を決めるのは自分自身ではなく、顧客がすべてというのがつまるところの結論だと思うんです。顧客が何を望んでいるかを把握し、顧客のために何ができるかが大切ですよね。

 現在の診断士試験では、「能力」は測定できますが、コンサルとしての個人の「適性」は測定できません。もしも将来、診断士試験で「能力と適性」を測れるようになり、コンサルティングに必要な資質を保証できるものになれば、診断士という肩書きだけで仕事を依頼されることがあるかもしれませんね。


第15回「502教室のコラム」

金 世永(中小企業診断士)

診断士街中を散策するのが好きな私は、仕事のかたわら、さまざまな街の風景やお店、ビルの看板などを眺めながら歩きます。パンパンに中身の詰まったカバンを持ち歩くことも多く、大変なときもありますが、それはそれで健康維持にもなるため、最近は意識的に歩くようにしています。

 街中を歩いていると毎日、新しい発見があります。飲食店では、美味しさや値頃感を演出するため、店頭でさまざまな工夫が凝らされていたり、その地域の客層に合わせて営業時間の設定がなされていたりします。また、ビルの看板にある企業名を眺めながら、業種や企業規模を想像してみたり、パンフレットがあれば手にしてみたりもしています。日本には420万社もの中小企業があるため、すべての企業に接することは現実的に無理がありますが、一歩街に出てみると、多くの中小企業がバイタリティを持って頑張っている様子が伝わってきます。

 中小企業は、日本経済を支えるダイナミズムの源泉であると言われます。中小企業が元気であればこそ、日本経済が活性化するのです。では、中小企業が元気になるために何が必要で、いま何が足りないのか。そして、それらの問題や課題を解決するために、私たち診断士にできることは何か。独立後は、街中を歩きながらそうしたことを考える機会が多くなりました。

 中小企業はそれぞれに、さまざまな経営上の問題や課題を抱えています。人材育成や資金繰り、システム整備、新商品開発、設備投資、知財保護等々。挙げればキリがありませんが、これらの問題・課題をすべてクリアするためには、それ相応の時間と労力がかかります。また、不透明な経営環境が続く中、新たな一手を打ち出していくための事業開発はとても重要で、ビジョン策定や戦略構築のために、どれだけの時間やリソースを割けるかが、将来の経営を方向づけることになります。しかしながら、目先の問題への対処や売上確保に時間をとられ、それ以外の目的で時間を確保することが難しい経営者も多くいらっしゃるのが現状のようです。

 では、この理想と現実のギャップはどう埋めればよいのでしょうか。皆様はもうお気づきかと思いますが、そこに診断士という資格の意義があり、私たちの役割があります。皆様が目指しているこの資格は、社会的に強く必要とされているのです。こうした事実を強く理解することこそが、皆様にとっての一番のモチベーションにつながるのだと思います。

 独立診断士として活動している私は、日頃から中小企業の経営者の方々に対し、経営理念の重要性や将来ビジョンの意義を唱えていますが、これらの重要性は、受験生の皆様にとっても同様だと思います。「なぜ資格取得を目指すのか」という目的意識を強く持つことこそが、合格への近道です。かく言う私も、自らのスキルアップや自己啓発のために勉強を始めたわけですが、中途半端な学習で易々と合格できる資格ではありません。だからこそ価値があり、意義のある資格なのですが、当時はあまり目的意識を強く持ち合わせていなかったため、予想していた以上に受験生活が長引いてしまいました。

 その後、本格的に学習を始め、何年か受験生活を続けていくにつれて、私にとっての目的意識は少しずつ変化していきました。そして、それに合わせて資格取得への気持ちも、「Want(取得したい)」から「Must(取得しなければいけない)」に変わっていきました。合格を強く意識するようになり、合格にこだわり続けた結果、無事に合格することができたのです。

 私たちが支援する中小企業の経営者が、リスクテイクしながら前のめりで事業を行っているのと同様に、私たちも合格という結果にこだわり、前のめりで学習を進めていく必要があります。勉強を始めれば、場合によってはプライベートの時間や家族と過ごす時間が失われることにもなりますが、経営者が日頃からとっているリスクに比べれば、まだかわいいものでしょう。「多少の犠牲を払ってでも、この資格を取得したい」、そして、「中小企業のお役に立ちたい」と強く思えるかどうか。それが、合否を分ける一要素ではないかと思います。

 皆様の合格を、身近にいる中小企業経営者の方々が待っています。こうなったら、頑張るしかありませんね。日本経済のダイナミズムの源泉である中小企業のために、WantからMustに気持ちを入れ換える時期がきているのかもしれません。


第14回「502教室のコラム」

三上康一(中小企業診断士)

診断士受験生時代、ガソリンスタンドに勤務していた私は、自家用車で通勤していました。朝6時過ぎからの開店準備に間に合わせるため、5時半には自宅を出発していました。自宅から職場へ向かう道は比較的空いているので、40分程度で到着しますが、帰りの時間帯は道が混雑するため、帰宅に1時間以上はかかります。

私は、この通勤時間を受験対策として活用できないものかと考えました。そこで、当時通っていた受験校には講義を録音できるサービスがあったので、車内で講義の音声データを再生し、毎日聞きながら運転していました。「これで、1日に2時間弱の勉強時間を確保できる」?私は、そう思っていましたが、運転中は運転に集中しており、音声を聞き流していただけだったので、何回聞いても講義内容が身につかず、私にとってこの方法は、あまり有効な受験対策ではありませんでした(もっとも、運転中に音声データに集中しているようでは、危険極まりないのですが…)。

 その後、私は音声データを聞きながら運転するのを止めました。また、毎日更新していたブログに勉強時間を記載するのも止めました。何をもって勉強時間とカウントするか、基準がない数値を公表することには意味がないと思ったからです。

  • 目的は合格であり、多くの勉強時間を確保することではない。
  • 合格するには、集中力を高めて勉強の質を向上させる必要がある。

 そうしたことに気づき始めた私は、起床時間を早め、出社前の時間を机に向かっての勉強時間にあてるようになりました。

 とは言え、決して朝に強くはない私がさらに起床時間を早めるのは、困難を極めました。最初は4時に起床するようにしましたが、目が覚めなかったり、机に向かってもウトウトしていたり。そこで、ブログで早朝学習する仲間を募り、ネット上で組織化しました。参加表明をしてくれた早起き受験生仲間内で、起床したことを知らせるブログ記事を書いたり、仲間のブログにコメントを入れたりと、早起きした事実を残すようにルールを決めました。いまなら、ツイッターも活用できるでしょう。

 余談ですが、当時の私は1次試験対策で運営管理を勉強しており、勉強したばかりのFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)をもじり、早起き受験生仲間をFSP(ファストモーニング・スタディ・ピープル)隊と名づけました。英語に詳しい一部の方からは、「ファスト(FAST)ではなく、アーリー(EARLY)だろう」とか、「スタディ(STUDY)ではなく、ラーン(LEARN)だろう」といった声も挙がりましたが、それはどうでもいいことで、とにかく励まし合い、早起きをしたかったのです。

 こうした取組みで早起きの習慣をつけた私ですが、だんだんと、ブログを書く時間や、仲間のブログを見に行く時間すら惜しくなるようになってきました。そして、FSP隊が自然消滅したのを機に、ブログの更新頻度もそれまでの半分以下に減らし、勉強時間を少しでも捻出するようにしました。ちなみに合格年度は、朝3時半に起床し、出社前に1事例を解いてから出勤していました。

 さて、このようにして早朝勉強を行っていた私ですが、起床時間を早めるようになって気づいたことがいくつかあります。その1つに、1日を主体的にスタートできることが挙げられます。それまでの私にとって、朝は「やってくる」ものでした。「会社に行かなければならないから、仕方なく起床する」という受け身の姿勢だったのです。しかし、起床時間を自分の意思によって早めたことで、「自らの意思で1日をスタートさせる」、つまり朝は「迎える」ものになりました。こうした主体的な姿勢は、仕事でも上司の指示を待つのでなく、自ら考え、行動するといった変化につながっていきました。

 思い起こしていくと、診断士の受験対策は、知識やスキルのほかに、時として生き方も問うものではないかと思えてなりません。


第13回「502教室のコラム」

及川勝永(中小企業診断士)

診断士資格を知らない人に、診断士というキャリアの選択を説明するのは、なかなか難しいものです。診断士を目指した動機と受験、そして、診断士として仕事をすることなどを、どうやったら説明できるのか、何かわかりやすい例がないかと思いをめぐらせていたとき、テレビで新卒大学生の就職難のニュースが流れていました。

 「どんな仕事をしたいのか、あまり考えていませんでした…」という学生のコメントに、「たしかに自分も、やりたいことを明確に持っていたかと言えば、あまりそうでもなかったなぁ。大学で勉強したかったことも、ボヤッとしていたし…」?そう考えているうちに、診断士というキャリアの選択を、大学受験や就職活動と結びつけて説明できそうなことに気づきました。

<大学と診断士の受験動機>

大学を受験するとき、医学部や薬学部など専門性の高い学部は別として、多くの方は、「まずは将来のために、大学で4年間、勉強しておこう」といった理由で進学を決めたのではないでしょうか? もちろん人生において、大学進学は必須ではありませんが、「将来のためにさらに一歩、進んだ教育を受ける」という動機で大学に入る人もいるわけです。診断士資格も同様で、明確に目的を持っている人ばかりでなく、ビジネスでのワンランク上のステージを目指して受験する人もたくさんいます。

<卒業後の進路選択>

大学も3年生の後半になると、自身の進路を決める時期になります。「大学は出たものの、自分はどんな仕事をしたいのだろうか?」、「自分のやりたいことは何だろう?」といったことを、真剣に考えなければなりません。

診断士が他の資格と大きく異なるのは、独占業務がないことです。会社員という“肩書き”はあっても、会社員という“仕事”がないのと同様、診断士という“肩書き”はあっても、診断士という“仕事”はありません。だから、診断士として何をするかは自分で考えるしかないわけで、学生と同様、合格後の進路に悩むことになります。

<リクルート活動>

おおよその進路が決まったら、今度は実際の就職活動が待っています。学生はこれまで、社会人というものを「みて」はきたものの、実際にどんな仕事をしているかを想像するのは、なかなか難しいものです。だからこそ、リクルーターやOB訪問を通してさまざまな社会人の話を聞き、その過程でしっくりいく仕事や会社をみつけて、入社試験や面接を受けていくことになります。診断士のキャリア形成にも、このプロセスはピタリとあてはまるようです。  私たちは、社会人経験はあるとはいえ、診断士の仕事は実際にみたことがありません。であれば、最初にすべきことは、診断士からさまざまな話を聞いてみることでしょう。実際に話を聞いて得られる情報は、自分の想像やネット上に書かれている話より、具体的でリアルなものです。

<インターンシップ>

話を聞いて興味を持てる分野がみつかったら、次は実際に体験してみることではないでしょうか。就職活動で言う「インターンシップ」にあたるのが、「先輩診断士の仕事を手伝ってみること」です。最初はタダ働きかもしれませんが、後悔することのないよう、一度は体験してみることが大切です。

<就職活動は人とのかかわり>

では、情報収集や仕事を手伝うための診断士のネットワークをつくるには、どうしたらいいのでしょうか。おそらく、もっとも手っ取り早いのは、診断協会に入会し、その中にある研究会に入ることでしょう。そうすれば、多くの診断士の方に会うことができます。そこで親しくなった先輩診断士に仕事の話を聞いたり、仕事を手伝わせてもらったりすることは、可能なはずです(もちろん、本人の努力は必要ですよ!)。

<失敗するケース>

診断士のキャリア選択で失敗するケースとして考えられるのは、「合格後に自分のやりたいことを考えていない」、「コミュニケーション不足で情報収集ができていない」、「自分の選んだ業務分野が自分の適性と合わなかった」などが考えられます。ただ、これらの失敗はいずれも、前述のプロセスを経ることで回避可能です。

診断士としてのキャリア選択は、人生2度目の職業選択の機会だと考えて、ぜひもう1度、“就活”にチャレンジしてみてください。


第12回「502教室のコラム」

金 世永(中小企業診断士)

診断士 日常生活には、さまざまな情報があふれています。インターネットが普及し、PCや携帯電話などの情報機器が日進月歩で高機能化する中、われわれのライフスタイルはずいぶんと変化してきたと感じることが増えてきました。

たとえば、以前は買い物へ行くにしても、ご飯を食べるにしても、自宅から一歩出ないとできなかったことが、いまではその多くが自宅のPC画面の前でできてしまいます。まさに、「ライフスタイルの変化」です。

それでも、仕事をするにはそうもいかず、出社しないと仕事ができないといったことも数年前までは当たり前でしたが、ITインフラが整った現在では、ワークスタイルまでもが変化しようとしています。実際に、最近ではいくつかの上場企業で、ITツールや情報インフラを活用して、自宅でも仕事ができる環境を整え、多様な就業機会を提供する、いわゆる在宅勤務制度を導入する動きもあります。こうした流れは、今後もますます広がると思われ、「ワークスタイルの変化」による、新たなライフスタイルの変化も期待されています。

さまざまな商品やサービスが誕生し、普及することで、より便利な社会がやってくる。これは、とても楽しみですね。でもこうした動きは、必ずしも万人にプラスだとはいえません。

先ほどの在宅勤務制度を例に挙げると、在宅勤務が可能になることで就業スタイルがより自由となる方々、たとえばプログラマーや、子育て世代の女性社員などにとってはプラスとなりますが、それによって広いオフィスが必要なくなるため、都市部のオフィス不動産を扱う業者にとってみればマイナスかもしれません。また、在宅勤務となった方々の自宅近くの飲食店は新たなお客様が増加する可能性がありますが、その会社のオフィス近くのコンビニはお客様が減ってしまう恐れがあります。

このようなワークスタイルは、まだ一部の業種・職種においてのみ適用されていますが、今後ますます情報インフラが整備され、新たなサービスが出現すれば、こうした働き方が一般的になるかもしれませんし、広く普及するまでにそれほど時間を要さないでしょう。現に最近、都市部のファストフード店や喫茶店では、多くのビジネスパーソンがPCを用いて作業しており、電源が使える席は常に埋まっている光景をよく目にします。

こうした社会環境の変化は、われわれの生活にもさまざまなインパクトを与えることになります。診断士用語を用いていえば、SWOT分析でいうところの「外部環境の変化」です。その変化が当該企業にとって機会なのか脅威なのかは、その企業が行う事業内容や企業が有する経営資源によって異なりますが、いずれにせよ、環境が経営に与える影響がとても重要であることには変わりありません。しかも、それらの変化が突然やってくることだってあり得ます。飲食店の隣近所にコンビニができたり、ベンチャー企業が始めた革新的なサービスを、大企業がすぐにキャッチアップして同様もしくはそれ以上のサービスを始めたり…。いつ何が起こるかわからないのも、経営の特徴の1つです。

SWOT分析でいう外部環境は、「(企業が)統制不可能な環境」を指していますが、それに対して内部環境は、企業自らが統制可能なものを指します。そのため、経営資源と同義とされていますが、診断士受験生の皆さんにとって「学習環境」は、「統制可能」と「統制不可能」のどちらに該当するでしょうか。

ここでの答えは、「その受験生によって異なる」が正解ですが、1ついえるのは、学習環境は、意思と努力、創意工夫でいくらでも変えられるということです。いまやITツールの活用で、通勤時間を学習時間に変えることだってお手のもの。ランニングをしながら情報収集することだって、簡単にできてしまいます。受験生の皆さんにとって、情報化がもたらすインパクトは確実にプラスですよね。

受験勉強に少し行き詰まっている皆さん、学習時間が足りないと焦る前に、一度自らの学習環境について客観的に振り返ってみましょう。自らをSWOTし、自らの学習戦略を考えてみるのです。そしていいアイデアが浮かんだら、すぐ行動。試験直前で、いままでのやり方すべてを否定し、変えてしまうことには賛成しませんが、もしかしたらちょっとした工夫で学習効率が増し、合格が近づくかもしれません。

自らの意思で変えられる環境は、たくさんあるはずです。「診断士試験、恐るるに足らず」です。


第11回「502教室のコラム」

三上康一(中小企業診断士)

富士山 今回は、私が診断士受験生として3年目を送っていた頃の話です。当時の私は週2回、受験校の平日夜の講座に通っていました。
科目合格制度がなかった頃の話ですので、1次試験を受験するとなると、全科目を勉強することになります。さすがに3年間、1次試験全科目の勉強をしていると、おおよそのことはわかったつもりになってきていて、受験勉強を始めたばかりの仲間に、勉強を教える機会も増えてきたものです。1次試験の模試でも上位に食い込むことができ、自分も周りも、私が合格することを確実視していました。
仲間の勉強の面倒もみてくれる。模試の成績もよい―そんな受験生だった私にとって、それらが落とし穴だったと気づいたのは、ずっと後のことでした。

1つ目の落とし穴。それは、後輩受験生に教えることで優越感を得て、自身の劣等感から目をそらしていたことです。

他人より長い期間、受験勉強をしていた私は、不合格の味を十分に知っていました。自分よりキャリアの短い受験生に教えることで、満たされない気持ちを満たそうとしていた?つまり、教えることで現実から目をそらし、劣等感を解消していたのです。

現実に向き合うことなくして、不合格の要因をみつけることはできません。それまでの不合格の原因もわからぬまま、私は対応策もとらず、前年と同じような勉強しかしていませんでした。

バッティング練習で、ヒットを打つ練習はしても、三振をするための練習をする野球選手はおそらくいないでしょう。しかし、間違った練習方法では、結果的に三振の練習をしているのと変わりがない可能性もあります。

同様に、不合格になろうとして勉強を頑張る受験生はいないはずです。しかし、自分に合わない勉強方法は、結果的に不合格を勝ち取る勉強と変わらないかもしれません。現実から目をそらしているうちは、合格できる勉強方法に出会うのは困難でしょう。当時の私には、自身の不合格を肯定する勇気を持ち、しっかり現実を分析することが必要でした。やっかいなのは、目をそらしていることには気づきにくいことです。ただし、そのことを知っておくだけでも、結果はかなり違ってくると思います。

なお、これは、受験生同士が教え合うことを否定するものではありません。教えるという行為で、何を得ようとしているのかを明確にすべきだ、と述べたいのです。

2つ目の落とし穴は、模試の成績の捉え方です。

診断士の受験生活を登山にたとえると、2次試験合格は頂上で、1次試験合格は5合目といえそうです。こう考えた場合、1次試験の模試は何合目なのでしょう。そもそも、「1次試験の模試でよい点数をとること」=「1次本試験の合格」でない以上、何合目と考えることすらナンセンスなのかもしれません。しかし、当時の私は、5合目はおろか、7合目あたりにまで到達したと感じてしまったのです。

その結果、模試終了後に、「勝って兜の緒を締めよ」とはならず、達成感に酔いしれる自分がいました。ちなみに、合格年度の模試の順位は、当時より低いものだったことを申し添えます。

「富士山の頂上に、たまたま登った人はいない」という話があります。登山の準備をし、計画を立て、登り始めたら、進んでいる道が正しいか否かを確認しながら登るものであり、3合目には3合目の登り方、5合目には5合目の登り方があると聞きます。自分がいま、どの位置にいて、やるべきことは何か、優先順位の高いものが何かを常に検証しながら、学習を進めていきたいものです。

さて、3度目の受験に失敗したことがわかった私は、またも現実を直視せず、迷うことなく、翌年度対策を始めました。そしてその1年後、4度目の受験も失敗となります。

ここで私は、プライドを捨てて合格者に教えを乞い、その方のアドバイスで1ヵ月間、受験勉強を封印することにしました。それまで1日も欠かさず、年間1,000時間以上勉強してきた私ですが、冷静になって自分を客観視してみようと考えたのです。この冷却期間は、その後の対策を立てるよい時間になり、翌年、5回目の受験で、ようやく1次試験を突破することになります。

読者の方には、今回の1次試験で悔しい思いをした方がいらっしゃるかもしれません。ぜひ、ご自身と向き合って、ご自身を客観的に分析してみてください。もし、分析できなかったら、診断士の方や受験仲間に、ご自身の不合格理由を尋ねてみてください。きっと、来年につながるヒントが得られると思います。

挑んだからこそ得た「不合格」です。挑まなければ、悔しい思いすらできないことを誇りに思い、諦めずに合格という頂上へ向けて登っていただきたいと思います。


第10回「502教室のコラム」

及川勝永(中小企業診断士)

実際にボールを投げるイメージや打つイメージ

昨年、一昨年と好評を博した「中小企業診断士2次試験 受験生最後の日 3つのドキュメント」ですが、タイトルを一新した今年度版(「事例80分料理法」)には、内容にも大きな変更があります。その1つが、受験生の方々の疑問に答えるコーナーを設けたことです。受験生と合格者がパネルディスカッションを行い、それに基づいた記事が掲載されています。

今回お話しするのは、そのパネルディスカッションに司会者として参加したときのこと。受験生お二方からの質問に、平成17〜21年までの各年1名の合格者5名が回答します。同じ質問でも、それぞれが5通りの回答を持っている場面もあり、非常に興味深いパネルディスカッションとなりました。

さて、パネルディスカッション終了後、参加者の皆さんと居酒屋で打ち上げをしていたときに、合格者の方から“ティッシュ”の話が出ました。この方は受験生時代、合格発表でご自身の受験番号をみつけた際に涙が出るシーンをイメージして、受験対策を行っていたとのこと。合格の嬉し涙をふくときは、特別なティッシュを使いたい。だから、そのときのためだけに、あらかじめ高級なティッシュを用意していた、というのです。さらに、合格した自分へ贈るメッセージもティッシュの箱に書いていたといいますから、合格をかなりリアルにイメージされていたのだと思います。

受験生の方々は、時間を捻出して机に向かい、書籍を読み、問題を解き、努力を重ねて合格に値する実力を養っていきます。ここで考えてみたいのが、ご自身が合格したときのイメージです。合格に値する実力を養うことと並行して、ご自身は合格するものとして物事を進めていく。それが、前述の例だと合格用のティッシュで、具体的な「もの」を用意することで、よりリアルな合格イメージが湧きやすくなります。ゴールのイメージがリアルであればあるほど、受験対策のモチベーションも上がることでしょう。

私は、少年野球のコーチをしていますが、投手であれば、ボールを持たずにピッチング動作をくり返すシャドーピッチングという練習方法があります。また打者であれば、実際にボールを打たず、バットを何度も振る素振りという練習方法があります。これらは、日が落ちてボールがみえなくなってしまった場合や、雨天で練習ができない場合、あるいは個人練習にも非常に有効な方法です。

ただ、シャドーピッチングにせよ、素振りにせよ、実際にボールを投げるイメージや打つイメージをしっかり持たないまま、やみくもかつガムシャラに行ったところで、実力の向上は見込めにくいものです。

イメージをリアルに湧かせるということは、当事者意識を持つことにつながります。たとえば、守備練習でノックを受けていて、ある選手がエラーをしたとします。その選手に同じ失敗をくり返させないために、監督は個別に指導しますが、着目したいのは、そのときのほかの選手の姿勢です。観察してみると、エラーした選手に対する指導内容に興味を持つ選手と、そうでない選手がいるものです。自分が指導されているのではないから関係ないとするか、それとも自分に対しての指導内容ではないけれども、関心を持つか。

両者のどちらが実力を伸ばせるかが自明の理であることは、皆さん、お気づきだろうと思います。Sence of Ownershipという言葉がありますが、すべての事柄において自分がオーナーシップを持つことを前提としたら、自ずと意識も変わるのではないでしょうか。

受験生の皆さんには、リアルに当事者意識を持ち、合格という果実をキャッチしていただきたいと思います。