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地域を活性化するマネジメント
※品切れ中

「地域力」を強くする3つの視点

著者名 中根雅夫 著
判型 A5/並製
頁数 240
定価 2,200円
(本体2,000円+税)
ISBN 9784496046599

→この本の内容

日本では、欧米に比べて都市計画規制が弱く、コンパクトシティを目指す研究や政策もあまり盛んではないが、関心は次第に高まりつつある。豊かなコミュニティづくりを目指している地域の事例(仙台市、富山市、宇都宮市など)を取り上げながら、地域活性化の方策を探る。              

→この本の目次

第1章 地域経営と活性化
1 地域経営をめぐる諸事情
2 地域活性化とITパワー
3 地域活性化とベンチャー・スピリット
4 「地域」の拡大――メタ・コミュニティの生成――

第2章 地域活性化とITパワー
――地域情報化をめぐって――
1 地域情報化の基本的考え方
2 地域情報化をめぐる諸事情
3 地域情報化の現状と課題

第3章 地域活性化とコミュニティ・ビジネス
1 コミュニティ・ビジネスの基本的考え方
2 コミュニティ・ビジネスをめぐる諸事情
3 コミュニティ・ビジネスと自治体対応の現状分析
4 コミュニティ・ビジネスの将来展望

第4章 コンパクトシティのインパクト
1 コンパクトシティの基本的考え方と諸相
2 各都市のコンパクトシティへの取り組み事例


→本書の「中身拝見」

まえがき


  本書は、地域社会において顕在化しつつある新しい動向に関して、実証的な考察を行ったものである。
  まず、地域の活性化という視点に立脚して、最近の地域経営をめぐる諸事情の中から、地域の自立化、地域行政のオープン化、地域社会のネットワーク化、地域の連携、商店街の活性化にポイントを置いて検討を加えた。
  もう一つの注目すべき点として、すでに一部の地域間で実際に取り組まれているが、地域SNS間の連携によって地域間交流がなされるなど、地域の拡大化が実現されつつあることを指摘することができる。これは、後述の「メタ・コミュニティ」の具現化したものである。

  本書では、地域情報化、コミュニティ・ビジネスおよびコンパクト・シティという三つの「潮流」に関してそれぞれ実証的な分析を行った。
  第1に、地域情報化の潮流である。周知のとおり、パソコンをはじめとする各種の情報機器の著しい普及とそれにともなう情報リテラシーの向上によって、多くの人たちがインターネットなどの効用をみずからの生活の中で日々享受するようになってきている。このことがもたらす影響は想像以上に大きい。
  まず、「つながり」の形成が促進される。すなわち、ICTの活用によって、時空間を超えて不特定多数の人たちと「つながり」を自由に持つことができるようになった。
  このことが地域活性化にプラスの効果として機能すれば、これまでにはない形で多くの一般市民を糾合し、「草の根」的な展開が実現できる。
  さらに、「メタ・コミュニティ」の形成をうながすことになる。すなわち、ICT化の進展にともなって、いわゆる行政区域を超えた「つながり」の集合としてのコミュニティが形成される。これまでにも、防災などの限られた分野で行政区域を超えた取り組みが散見されるが、ICT活用による新たな「つながり」が必然的にバーチャルな形で、コミュニティの形成をうながすことになる。
第2に、地元地域への貢献を志向するコミュニティ・ビジネスの潮流である。
  実際に破綻に追いやられた自治体や、現在、瀕死の状態を露呈している自治体、また近年、「限界集落」と呼称される、社会的な基盤や機能を決定的に欠いた地域が少なからず出現するなど、単に経済的な側面だけではなく、社会的な協同生活を支えるコミュニティの脆弱化によって、さまざまなひずみが生じてきている。
  もとより、これらの社会的な問題を解決するためには、国家レベルでの有効な政策の実行は言うまでもないが、とりわけ地元自治体の具体的な取り組みが強く求められる。
  しかし、現在のところ、大半のコミュニティ・ビジネスが試行錯誤を繰り返しているのが実態である。もともと、ビジネスとして見た場合に、コミュニティ・ビジネスが対象とする市場は必ずしも高付加価値の魅力的なマーケットではない。さらに、経営管理的な側面に関しても、経験豊かな人材にも乏しく、事業者としての意識も高いとは言えないケースが多く、その意味で、「アマチュア」的な対応に終始する状況がもたらされている。
  第3に、自治体の行政効率の向上と中心市街地の活性化を志向するコンパクト・シティの潮流である。
  コンパクト・シティが志向される背景には、多くの地域で顕在化しつつあるスプロール現象に歯止めをかけて、行政効率の向上を意図する有効な手段として、また、疲弊した中心市街地の活性化をうながすことで地域力を増強させ、そのことによって歳入改善を実現させる意図が強くうかがえる。
  ともかく、コンパクト・シティを考えるうえで重要な点は、都市機能を強調するだけではなく、ヒト(住民)を中心に据えた理念的な捉え方であろう。あくまでも地域が主体になって、地域事情に合ったまちづくりを通じてコンパクトタウンをめざすべきであろう。

  本書で取り上げた内容の多くは、協力者の温かな支援がなければ到底なしえなかった。貴重な時間を割いて筆者のために直接ヒアリングに応じていただき、資料を含めて価値的な情報を進んで提供してくださった関係者の方々、また、多忙な中で筆者のアンケート調査に回答していただいた方々の対応がなければ、本書も陽の目を見ることはなかった。その意味で、これらの協力者に心より感謝の念を捧げたい。
  また、コンパクト・シティの本格的な実証研究に着手するきっかけをつくってくださった浜松大学・手塚孝教授にも謝意を表明する。

2010年2月
                   国士舘大学 中根 雅夫

→著者の情報

国士館大学政経学部教授

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