従来の中小企業研究は大企業の存在を前提とした中小企業論だった。そうしたことは得てして大企業に対する弱者の救済としての中小企業論であることが多いが、本書は中小企業の役割を新しくとらえ直すための中小企業論である。 企業の多様性と持続可能性の視点から中小企業を分析しようとの試みであり、経済の仕組みだけではなく、多様性を包摂でき、変化に対応できる社会や個人の在り方が今後ますます問われてくるであろうから、その在り方に応えられる中小企業論となっている。
序 章 本書の中小企業論の特徴 第1章 中小企業の現状 1 中小企業の概念 2 持続可能性と多種多様性から見た中小企業 3 日本の中小企業の定義 4 世界の中小企業 5 中小企業の存続理由 第2章 中小企業の存在理由(生産費用編) 1 中小企業の理論とは 2 生産性と分業論 3 比較優位論 4 生産性と収穫の法則 5 費用便益モデル 6 企業の大規模化に必要な生産要素 第3章 大企業の登場と中小企業の存在理由(取引費用編) 1 チャンドラーの大企業研究 2 アメリカでの大企業の成立とその条件 3 大企業の成立に不可欠な条件 4 市場と組織の効率性をめぐる研究 5 ペティ=クラークの法則 6 プロダクト・サイクル論 7 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM) 第4章 日本における中小企業の歴史 1 日本の中小企業の競争力 2 日本の企業形成の歴史 第5章 二重構造論とその背景 1 戦前から引き継がれた二重構造問題 2 戦後の二重構造論の特徴 3 二重構造論の問題点 第6章 日本における産業構造の変化と中小企業 1 経済の大転換 2 産業の空洞化 第7章 産業集積と中小企業 1 世界的な経済成長の鈍化と中小企業 2 産業集積モデル 3 イタリアの産業集積 第8章 産業クラスターによるイノベーションの創出 1 産業集積から産業クラスターへ 2 イノベーションの創出とアントレプレナー 3 産業クラスターとイノベーション 第9章 日本の大企業内アントレプレナー育成の不調と地域への期待 1 グローバル市場における日本の大企業の衰退 2 地域と人間関係の視点で見るイノベーションの理論研究 第10章 アントレプレナーを育てる地域の研究 1 ナショナル・イノベーションシステム 2 地域的イノベーションシステム 3 ローカル・ミリュー論 4 コン・ヴァンシオン経済学の制度と生産 5 「生産の世界」論 6 スピンオフによるアントレプレナーの起業と地域 7 組織規模に対応した組織の危機 8 日本企業でのスピンオフにおける諸問題と地域性による克服の可能性 9 風土における中小企業の競争力 第11章 産業構造と中小企業 1 産業構造とは 2 アーキテクチャとモジュラー化 3 モジュラー型(組合わせ型)とインテグラル型(擦合わせ型) (1) モジュラー構造(アーキテクチャ)の特徴 (2) インテグラル構造(アーキテクチャ)の特徴 (3) オープン構造(アーキテクチャ)の特徴 (4) クローズ構造(アーキテクチャ)の特徴 4 製品のヒエラルキー構造 5 製品アーキテクチャと企業間関係 6 企業と組織は、機能を体現する 第12章 下請構造と中小企業 1 下請構造と中小企業 2 戦後日本における下請企業の認識変化 3 高度経済成長期における下請企業の増加 4 低成長期への転換と中小下請企業強化の特徴 5 ピラミッド構造と山脈型社会的分業構造 6 大企業のグローバル化と中小企業の自立化 第13章 農村型中小企業とアントレプレナー 1 農村型中小企業の研究の意義 2 市場における非対称情報と農産物 3 中間組織 4 農村地域の特徴 5 生産と消費が同一空間で一体化した農村社会 6 農業と工業、化学、情報の融合によるイノベーションの時代 第14章 中小企業を支援する様々な団体 1 商工会議所 2 中小企業組合 3 中小企業家同友会 第15章 多様性と持続可能性の視点で考える中小企業 1 持続可能な社会とは 2 経済学における社会的共通資本 3 企業利益の追求による構造的問題としての公害 4 経済の内発的発展による企業活動への制限 5 外部性の内部化による持続可能性 6 自由経済主義の非自然性 7 新しい経済制度の必要性 8 経営学における組織と環境 9 持続的地域依存型企業への規制緩和と支援 10 SDGsと中小企業 11 知識基盤社会における持続可能な中小企業 12 中小企業のマネジメントと地域性 13 多様性と持続可能性から考える中小企業
お詫びと訂正"(2021-05-20)" 『多様性と持続可能性の視点で考える中小企業論』に下記の誤りがありました。 お詫びして訂正致します。 33ページ 第2章の「図表2-3 費用便益モデル」にて図表内の数値に誤りがございました。 「ATC」の列 「生産量4」の行 136(誤) → 135(正) 「生産量5」の行 180(誤) → 130(正) 「生産量6」の行 180(誤) → 130(正) 「生産量7」の行 133(誤) → 132(正)
正誤表-1 (2024年7月5日更新)
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