本書の大きな特徴は、流通論として確保すべき不変的な部分は保持しつつも、近年の日本の流通を大きく規定する価格破壊現象、流通の国際化、流通規制緩和、「新たな」零細小売業問題の発生などにも光を当て、これを流通弱者、国民本位の立場から解明し、あわせて、中小流通業業者の生き残り策やあるべき流通政策の姿を求めての具体的提言も行っているところにある。なお、本書は『現代流通の諸相』(2016年)をベースとして書かれているが、「買物弱者問題の検討」、「農山村型および都市型フードデザート問題の比較検討」、「岐路に立つコンビニエンスストアの諸問題」3章分を新たに追記をし、残りの章についても見直しを行った結果、単なる改訂版の域をはるかに超えてしまい、書名も一新して刊行されることになったもの。
第I部 基礎流通編 第1章 流通、商業、およびマーケティングの概念 第1節 流通の概念 第2節 商業の概念 第3節 マーケティングの概念 第4節 流通、商業、およびマーケティングの相違・関連 第2章 流通およびマーケティングの研究方法 第1節 伝統的アプローチ 第2節 現代マーケティング論の研究方法〜近代的アプローチ〜 第3節 現代流通論の研究方法 第3章 流通機構の史的形成 第1節 本章の意義 第2節 日本の流通機構の変遷 第3節 欧米の流通機構の変遷 第4節 日・欧米の流通機構変遷に関する要約とその比較分析 第5節 総括 第4章 卸売業の概念および分類とその役割 第1節 卸売業の概念と基本機能 第2節 卸売業の分類 第3節 卸売業の社会的役割 第5章 小売業の概念および分類とその役割 第1節 小売業の概念と基本機能 第2節 小売業の分類 第3節 小売業の社会的役割 第6章 小売業における主要業態と経営方式 第1節 既存研究における業態論 第2節 小売業の業態認識とタイプ分類 第3節 小売業態の生起・発展理論 第4節 主要小売業態 第5節 チェーン・オペレーション 第7章 メーカーのチャネル戦略 第1節 流通チャネルの概念と類型 第2節 流通チャネルの決定要因 第3節 チャネル政策の主体と体系 第4節 流通チャネルの系列化 第5節 複合的チャネル政策の展開 第II部 実態論 第8章 卸売業における構造・環境変化と生き残り方向 第1節 卸売業の構造変化 第2節 卸売業を取り巻く環境変化 第3節 今後の卸売業(中小卸)の生き残り方向 第9章 小売業に進む構造変化と中小小売業の生き残り方向 第1節 小売業に進む構造変化 第2節 中小小売業の生き残り方向 第10章 大型店問題調整の展開プロセス 第1節 戦前の大型店問題 第2節 戦後の大型店問題 第11章 零細小売商業施設の諸問題と存在意義 第1節 本省の意義 第2節 零細小売業問題の意味 第3節 零細小売商業施設の捉え方 第4節 零細小売商業施設の存在意義 第5節 総括 第12章 買物弱者問題の検討 第1節 本省の意義 第2節 買物弱者問題の発生 第3節 関満博『中山間地域の「買い物弱者」を支える』(新評論)の検討 第4節 買物弱者問題の検討 第5節 総括 第13章 農山村型および都市型フードデザート問題の比較検討 第1節 本省の意義 第2節 農山村型および都市型フードデザート問題の比較検討 第3節 「きずな社会」の再構築に向けて 第4節 総括 第14章 岐路に立つコンビニエンスストアの諸問題 第1節 本省の意義 第2節 コンビニの現状分析 第3節 コンビニ問題の表面化と各社の対応 第4節 コンビニ加盟店主の階級的性格と社会的役割 第5節 コンビニ訴訟とフランチャイズ規制法 第6節 コンビニの新たなビジネスモデル 第7節 総括 第15章 価格破壊と流通 第1節 価格破壊のルーツ 第2節 価格破壊のメカニズム 第3節 価格破壊の影響 第4節 中小小売商への提言 第16章 流通外資の日本進出とその影響 第1節 流通の国際化の形態 第2節 流通外資の進出背景 第3節 流通外資の進出状況 第4節 巨大流通外資の日本市場攻略戦略 第5節 流通外資進出の影響予測 第III部 政策編 第17章 流通政策の体系と小売流通政策 第1節 流通政策の体系 第2節 小売流通政策の変遷 第3節 規制緩和と国際流通政策 第18章 流通政策の大転換 第1節 本省の意義 第2節 大店法規制緩和(撤廃)批判の論拠 第3節 大店法廃止と新法制定 第4節 まちづくり3法の改正 第5節 政策的提言
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