中小企業問題の根底にあるのは大企業と比べた付加価値生産性の低さである。それが、どのような要因によって生まれるかは、戦後から高度経済成長期に活発に議論されたが、停滞期が続く昨今、その要因を改めて明らかにすることが必要なのではないだろうか。近年においては、大企業と中小企業の格差だけでなく、中小企業内の格差も大きくなってきたことを踏まえ、今一度、企業規模の意義を問い直すことが、中小企業研究において必要な時なのではないだろうか。 本書では、上記のような視点に基づき、大企業と中小企業との格差のみならず、中小企業内格差も視野に入れて、規模格差の要因を明らかにする。
序章 資本装備率や収奪で捉えきれない規模間格差の拡大 第I部 規模間格差の理論、歴史、要因 第1章 中小企業と規模間格差 第2章 製造業の規模間格差に関する理論の整理と考察 第3章 高度経済成長期以降の規模間生産性格差の推移 第4章 景気循環と規模間格差 第5章 規模間格差を生む受注環境の変化 第6章 中小企業下位層における受注減少の実態 第II部 需要縮小期の中小企業の存立 第7章 2000年以降の産業構造変化と中小企業部門の縮小 第8章 2000年以降における中小企業の存立分野の縮小 第III部 規模間格差の影響と政策 第9章 規模別賃金格差に関する考察 第10章 中小企業政策と中小企業内格差 終章 厳しい受注環境で生き抜く中小零細企業
1965年 徳島県牟岐町生まれ。 神戸大学法学部、大阪大学経済学部卒業。 現在:大阪産業経済リサーチセンター(旧、大阪府立産業開発研究所)統括研究員。 著書:『大都市型産業集積と生産ネットワーク』(共編著)世界思想社、2012年 『日本のインキュベーション』(共著)ナカニシヤ出版、2008年 『中小企業研究序説』(共著)同友館、2019年 『激動する世界経済と中小企業の新動態』(共著)御茶の水書房、2023年
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