街中を散策するのが好きな私は、仕事のかたわら、さまざまな街の風景やお店、ビルの看板などを眺めながら歩きます。パンパンに中身の詰まったカバンを持ち歩くことも多く、大変なときもありますが、それはそれで健康維持にもなるため、最近は意識的に歩くようにしています。
街中を歩いていると毎日、新しい発見があります。飲食店では、美味しさや値頃感を演出するため、店頭でさまざまな工夫が凝らされていたり、その地域の客層に合わせて営業時間の設定がなされていたりします。また、ビルの看板にある企業名を眺めながら、業種や企業規模を想像してみたり、パンフレットがあれば手にしてみたりもしています。日本には420万社もの中小企業があるため、すべての企業に接することは現実的に無理がありますが、一歩街に出てみると、多くの中小企業がバイタリティを持って頑張っている様子が伝わってきます。
中小企業は、日本経済を支えるダイナミズムの源泉であると言われます。中小企業が元気であればこそ、日本経済が活性化するのです。では、中小企業が元気になるために何が必要で、いま何が足りないのか。そして、それらの問題や課題を解決するために、私たち診断士にできることは何か。独立後は、街中を歩きながらそうしたことを考える機会が多くなりました。
中小企業はそれぞれに、さまざまな経営上の問題や課題を抱えています。人材育成や資金繰り、システム整備、新商品開発、設備投資、知財保護等々。挙げればキリがありませんが、これらの問題・課題をすべてクリアするためには、それ相応の時間と労力がかかります。また、不透明な経営環境が続く中、新たな一手を打ち出していくための事業開発はとても重要で、ビジョン策定や戦略構築のために、どれだけの時間やリソースを割けるかが、将来の経営を方向づけることになります。しかしながら、目先の問題への対処や売上確保に時間をとられ、それ以外の目的で時間を確保することが難しい経営者も多くいらっしゃるのが現状のようです。
では、この理想と現実のギャップはどう埋めればよいのでしょうか。皆様はもうお気づきかと思いますが、そこに診断士という資格の意義があり、私たちの役割があります。皆様が目指しているこの資格は、社会的に強く必要とされているのです。こうした事実を強く理解することこそが、皆様にとっての一番のモチベーションにつながるのだと思います。
独立診断士として活動している私は、日頃から中小企業の経営者の方々に対し、経営理念の重要性や将来ビジョンの意義を唱えていますが、これらの重要性は、受験生の皆様にとっても同様だと思います。「なぜ資格取得を目指すのか」という目的意識を強く持つことこそが、合格への近道です。かく言う私も、自らのスキルアップや自己啓発のために勉強を始めたわけですが、中途半端な学習で易々と合格できる資格ではありません。だからこそ価値があり、意義のある資格なのですが、当時はあまり目的意識を強く持ち合わせていなかったため、予想していた以上に受験生活が長引いてしまいました。
その後、本格的に学習を始め、何年か受験生活を続けていくにつれて、私にとっての目的意識は少しずつ変化していきました。そして、それに合わせて資格取得への気持ちも、「Want(取得したい)」から「Must(取得しなければいけない)」に変わっていきました。合格を強く意識するようになり、合格にこだわり続けた結果、無事に合格することができたのです。
私たちが支援する中小企業の経営者が、リスクテイクしながら前のめりで事業を行っているのと同様に、私たちも合格という結果にこだわり、前のめりで学習を進めていく必要があります。勉強を始めれば、場合によってはプライベートの時間や家族と過ごす時間が失われることにもなりますが、経営者が日頃からとっているリスクに比べれば、まだかわいいものでしょう。「多少の犠牲を払ってでも、この資格を取得したい」、そして、「中小企業のお役に立ちたい」と強く思えるかどうか。それが、合否を分ける一要素ではないかと思います。
皆様の合格を、身近にいる中小企業経営者の方々が待っています。こうなったら、頑張るしかありませんね。日本経済のダイナミズムの源泉である中小企業のために、WantからMustに気持ちを入れ換える時期がきているのかもしれません。